東京高等裁判所 昭和41年(行ケ)105号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 本件審決は、本願発明と先願発明とにおいて使用する触媒につき、固形物の有無の点において、実質上の差異は認められないとした点において判断を誤つたものといわざるをえない。すなわち、本願発明の要旨及び訂正書によれば、本願発明において使用される触媒は、「存在する固体物質をすべて除去することにより造られ」た物質からなるものであること明らかなところ、先願発明において使用する触媒は、固形物質を含有するものであることは、先願発明の特許公報の記載、……並びに実施例2及び3について触媒中に固形物を含むか否か不明であるが、その他の実施例はすべて触媒に固形物質を含むことが明白である点を総合すれば、明らかなところであるから、両発明において使用される触媒は、固形物含有の点において相違し、しかも、これら発明におけるようなブタジェンあるいはこれを含む共役オレフインの重合方法において、それに使用される触媒に関する前認定のような差異は、それぞれを使用した場合の工程その他の作用効果においておのずから差異を生ずるに至るべきことは、<書証>に徴し、明らかに認めうるところであるから、本件審決が、両者の間に実質上の差異はないと断じたことは誤りといわなければならない。もつとも前掲<訂正前の明細書>には本願発明に使用すべき触媒につき右認定と牴触するような記載がないわけではないが、原告が昭和三十七年十一月二十日付でした訂正により適法かつ明確に、特許請求の範囲につき前認定のような限定をした以上、訂正前の明細書の詳細な説明中に右限定に牴触する記載があつたとしても、これをもつて、本願発明の要旨に規定された触媒の性質と異なる認定をすることは相当ではないといわなければならない。
(むすび)
三 叙上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、他の点について判断を用いるまでもなく、理由があるものということができる。よつて、これを認容する。
(三宅正雄 土肥原光圀 武居二郎)